もっと人生を楽しんでもらいたいから、就労率100%を目指す。就労移行支援事業所「はた楽ステーション」のチャレンジ

障がいを持つ方が就労を希望する場合に、どのように就労機会を得るのでしょうか?

様々な方法がありますが、そのひとつに就労移行支援事業所があります。障がい者総合支援法に基づく、国による支援事業のひとつで、一般企業に就職を目指す障がい者に対し、就労に必要な知識・能力開発を行い、訓練後は主に一般企業への就労を目指します。

ビジネスマナーや基礎的なオフィスソフトの技術など就労の為に必要なスキルやマナーが2年間で学べますが、課題もあり、実際の移行率は約25%に留まっています。(H27年厚労省「障がい者の就労支援について」データより)

 20152月京成電鉄千葉中央駅から徒歩1分の立地で事業を開始した就労移行支援事業所「はた楽ステーション」では、ネイリストとリラクゼーションセラピストという接客業に特化し、就労継続率100%を目指しています。

今回は、はた楽ステーションで主に施設の運営や利用者のトレーニングに携わる施設長の中村さんと、障がい者雇用を積極的に行うサポート企業の開拓を行う営業部長の山本さんに、その取り組み内容についてお話を伺いました。

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中村さん

中村さんは、元々セラピストとして他店で活躍。障がい者支援とは無縁だったそう

はた楽ステーションの事業内容について、簡単に教えてください。

まず、はた楽ステーションでは4つのコースを利用者である障がい者の皆様にご提供しています。

 1つは、PCITコース。エクセル・ワードといった企業の事務職に求められるPCソフトの基本操作に加え、HP作成技術やプログラミング基礎、ブログやSNSの活用など企業の求めるPCスキルに応じてより専門的な技術習得が可能です。

 次に、リラクゼーションセラピスト養成コース。こちらは、いわゆるもみほぐしをするお店への就労を目指すもので、リラクゼーション業協会の教本を使い、セラピスト検定2級相当の知識と技術を習得できるコースです。

これは、一般の養成校を卒業して店舗にセラピストとして就職する方々と同じレベルです。

 ネイリスト養成コースでは、約1年のコースの中でネイリスト検定3級とジェル初級検定が合格できるようなプログラムになっています。こちらも、一般のネイリスト養成学校の卒業生が店舗に就職するのと同じレベルに達するようになっており、即戦力としてお店で活躍できることが想定されています。

これら3つのコースはどれも専門技術の習得による就労を目指し、修了するのに最低1年はかかります。

ただ、利用者さんそして私たちの目的は、あくまで具体的な就労に結びつき、その後も継続して働いて頂くことなので、可能な限り就職先の店舗や企業の求める能力に近づけることを目指しています。

  最後は個別コースですが、これまでに説明した3つのコースのどれにも当てはまらない方の為のコースです。利用者さんと相談しながら、何ができるかを考え収入獲得への道を探っていきます。

 元々、施設の立ち上がり時はセラピストとネイリストの2種類のみから始まりました。

しかし、利用者さんによってはそのどちらも難しい方もいらっしゃいます。先程も申し上げた通り、私たちの目的は全ての利用者さんが仕事を見つけ、自立をしてもらうことでありネイリスト・セラピストの養成ではありません。

その為、事業を進める中で需要の出てきたPC/ITコースを新設しました。

その代わり、他の就労移行支援ではあまり行っていない、HP更新やプログラミング基礎などの専門技術の習得が出来るようになっています。

山本さん笑顔

山本さんは都内でネイルサロンを経営。障がい者の可能性を伸ばす事業に共感し転職。

どのような方が利用されているのでしょうか。

 定員20名のうち、8割が精神障がいを持つ方で、残りが身体・知的障がい者です。

年齢層は60代~20代と幅広いですが30代後半~40代が最も多く、以前は一般就労をしていたものの途中で病気を発症し退職、再就職を目指していらっしゃいます。元々、ネイリストやセラピストだった方はあまりいませんが、障がいを抱えながら再就職できるのか強く不安を感じており、手に職をつけて即戦力として働きたいと、はた楽ステーションのプログラムに魅力を感じ入所して頂ける方が多いですね。

朝礼風景

毎朝、全員揃っての朝礼と掃除から始まる

技術を伴う接客業への就労移行支援は、全国でもめずらしいそうですね。なぜ、接客業に着目したのでしょうか?

 多くの就労移行支援事業では、主に企業の事務職を想定したPCスキルの習得の提供を行う事業所が主だと思います。それは、利用者のニーズでもあります。事務職は人気があるのです。

でも世の中にある実際の求人は、事務職ばかりではありません。

 ネイリストとセラピストを対象にしたのは、求人数の多さと時給の高さです。

実は、ネイル業界とリラクゼーション業界では、慢性的な人材不足が深刻な課題になっています。店舗数は年々拡大傾向にありますが、結婚や独立などで離職する方も多く、特にネイリストは主婦の方が自宅でもできる仕事として学校を卒業するケースもあり、店舗の人材は不足しています。

また、接客業でも技術職のためスタートでの時給が高い上に、一般の方と給与の差がありません。

企業の一般就労ですと、障がい者雇用だと賃金や昇級制度が一般の方より劣る場合が殆どですが、雇用形態が一般の方と同じなので歩合制であればやった分稼ぐことも可能です。条件によって店舗を移ったり、独立も可能でしょう。

 私たちは、利用者さんに就職・自立し、趣味でもなんでも自分の好きなことができるように、その技術や機会を提供したいと考えています。難しいかもしれませんが就労継続率100%を目標にチャレンジしたいと考えています。

マッサージ1

2年かけて基礎技術を学び、即戦力として活躍できるように備える

障がい者就労支援として、人とのコミュニケーションを伴う接客は利用者にとってもハードルが高いのではないかと思います。進める中で難しさはありませんでしたか?

 就労移行支援事業開始時に、千葉市に認可をとりますが、その際にも行政からは接客業は難しいと言われていました。特に精神障害をお持ちの場合、人とのコミュニケーションを苦手とする方は多いと思います。でも、就労と言う視点で考えた時に、コミュニケーションが全く発生しない仕事は少ないですよね。もし、この部分が少しでも克服できたら、仕事の可能性も大きく広がると思いますので、前例がなく難しさはあるかもしれませんが、チャレンジする価値はあると私たちは考えました。

いざやってみると、思ったより利用者の方々は上手だったというのが感想です。

利用者さんも、最初は戸惑い、コミュニケーションが難しい方もいらっしゃいました。そこで、接客の流れをきっちり教えるようにしました。例えば、セラピストならどのタイミングで自己紹介をして、いつ体の具合を聞いて、など細かく伝えていきます。こういったマニュアルがないと、間違ってはいけないと不安を感じていたのですが、過程ごとに細かく分解して説明すると安心して取り組むようになりました。

半年もすると、表情も明るくなって自然なコミュニケーションができるようになってきたのです。

 また、後から気づいた効果でしたが、訓練の中でお互いに触れ合うことが症状の安定にもつながっていたようです。入所時は非常に症状が不安定だったのが、時間が経つにつれて症状も収まり落ち着いた生活を送れるようになった方もいらっしゃいます。

PC

複数のコースを体験し、自分の適性を判断することもできる

就労継続100%を達成する上で、課題はどんなことだと思いますか?

 事業立上げの際に、就労先は決まっても定着率が低いという状況について、その理由を考えました。

私達の答えは、企業・利用者の意識のギャップにあると考えています。

ここでいう企業は、ネイルサロンやリラクゼーション店舗も含みます。例えば、「事務職」の求人があったとして、実際に何をしてほしいのか、どんなスキルを持ったひとが求められているのかなど企業によっても多種多様です。電話対応一つとっても、中継ぎだけなのか、何かしらの対応が必要なのかによって必要なスキルは変わってきます。一方で、利用者も事務職はこういう仕事、と勝手に想像してしまい、実際に働き始めて出来ないことを求められ、働けなくなる場合もあるのです。 

その為、私たちは企業の方には「戦力として考えた時に、どんな人がほしいか」を考えてもらい、具体的に必要なスキルや能力を出来るだけ細かくヒアリングをしています。その内容を利用者さんに伝え、いま足りない部分を習得したりと、企業が求める人材に近づける努力をします。 

 企業によっては、そもそも障がい者雇用自体が初めてで、求人を出したくても何をしてもらえるのか見当がつかない、という場合もありますし、一方的なイメージで「これしかできないだろうと仕事の幅を予め狭くしてしまうこともあります。

利用者さんも、仕事を通じ役に立ちたいと考えていますので、仕事が与えられなかったり何も期待をされないと精神的にも辛くなってしまします。その場合には、利用者さんが出来ることを細かくお伝えし、一緒に活躍の場を考えていくようにしています。

時間はかかりますが、双方のギャップをなくし戦力として長期的に働いてもらうためには必要な工夫だと思っています。

ネイル

道具も一般のネイル学校で使用しているものと同様

今後、ますます障がい者の就労機会が増えるであろう中で、就労支援をする立場として、受け入れ側である私たちが意識すべきことは何だと思いますか?

 障がい者差別禁止法にある「合理的配慮」に基づく対応は勿論必要です。加えて、意識的な支援として障がい者と共にその可能性を模索してもらいたいと思います。

障がい者だからこう、障がいを持っているから簡単な仕事しか任せられない、と一括りにするのではなく、個々と対話をしてほしいです。私達自身がそうであるように、ひとりひとり出来ることは違うし、実際に多くのことが出来る可能性を持っていると思います。

職場の戦力として、活躍の場を作るという意識で、何ができるのか、何をしてほしいのかを障がい者と共に考える姿勢を意識してほしいと思います。

私達は、両者の間に立って、そのマッチングのお手伝いをさせて頂きます。

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就労移行支援事業「はた楽ステーション」ウェブサイト

 

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